毎年のように流行し、人々に襲いかかるインフルエンザです。
皆さんはこの『当たり前のように浮遊しているインフルエンザウイルス』のことを、どれくらいご存知でしょうか?
症状については、罹ったことのある人ならわかります。
ですが、ウイルスが体内に入ってから、症状が出るまでの潜伏期間はどれくらい?
ということまではあまりわかっていないことも。
インフルエンザに罹ったものの、社会人として休めない仕事がある。
会社に行かなければいけない。…でもこれって出勤してもいいのか?
みんなに伝染して迷惑になるんじゃないか?
いつからだったら会社に行ってもいいのだろう。
そういった疑問もわいてきますね。
いざ罹ってから朦朧とした意識で考えるよりも、先にしっかりと知っておきたいものです。
というわけで、今回は
● インフルエンザの潜伏期間と症状
● 会社にいつから出勤していいか
● まとめ インフルエンザは予防から
といった内容でご案内してまいります。
インフルエンザが猛威を振るう時期を前に、しっかり対策を考えておきましょう。
● インフルエンザの潜伏期間と症状
〇 インフルエンザの潜伏期間は1~2日
インフルエンザウイルスの潜伏期間は短く、発症する前日から前々日にウイルスが体内に入ってきたのだと考えられます。
これは通常の風邪(感冒)ウイルスの5~6日と比べて、相当短いんですよね。
インフルエンザウイルスは飛沫感染と接触感染によって体内に侵入してきます。
インフルエンザに罹った人が咳やくしゃみをすると、ウイルスが飛散します。
これをそばにいる人が吸い込んでしまうことで感染します。これが飛沫感染です。
また、インフルエンザに罹った人が触ったものを別の人が触り、手を洗わずに目をこすったりすれば、粘膜を通して感染します。
こんな形で体内にウイルスが侵入してからわずかの間に発症するのですから、抵抗力の低い人などは特に注意が必要です。
〇 インフルエンザの症状は『いきなり高熱』がでる
インフルエンザウイルスが体内に入ってきて、すんなり潜伏期間をクリアすると
『いきなり体温が38度以上の高熱になる』
という症状が出てくるのは、皆さんご存知かと思います。
実はこの症状には理由があります。
インフルエンザウイルスの潜伏期間が、普通の風邪に比べて短いということは先に述べましたね。
それがなぜこんなに短いかというと、ウイルスの増殖力が強力であることと関係しています。
『体内に侵入した1個のインフルエンザウイルスは、24時間後には100万個に増えている(!)』
と言われており、潜伏期間中にはすさまじい数に大増殖します。
このウイルスの大軍と闘うために、生体防御機能が働きます。
白血球やマクロファージなどの免疫“活性食”細胞が、侵入者であるウイルスをバクバク食べてやっつけます。
免疫活性食細胞はサイトカインという物質を作り出します。サイトカインは『内因性発熱物質』と呼ばれています。
サイトカインは血流にのって一路、脳に向かいます。目的地は視床下部ですが、
そこにはゲートとなる血液脳関門があって行く手を阻みます。
そこでサイトカインはメディエイタという情報伝達物質の産生を促します。
メディエイタは脳の視床下部に、ウイルスがたくさんやってきているよ!という情報を伝達します。
すると、視床下部にある体温調節中枢が身体各部に『熱を上げなさい!発熱しなさい!』という指令を送ります。
すると、身体各部がそれぞれ熱を発するために、皮膚の血管を収縮させて汗腺を閉じたり、
筋肉を震えさせて熱を作りだしたりします。これが悪寒や関節・筋肉痛の原因になります。
熱を作り、熱の放出を抑えることで、体温が一気に上昇し、発熱状態になります。
発熱することで、ウイルスの増殖を抑えつつ、白血球の機能をアップさせることが出来ます。
これが、いきなり高熱になるという発熱のメカニズムです。
微熱でなく高熱になるのは、それだけインフルエンザウイルスが強力な増殖力を持っているからですね。
急激な発熱に伴って、悪寒や関節・筋肉痛が起こります。
また一方で、体からウイルスを追い出すために、くしゃみや咳をします。
鼻水が出るのもウイルスを追い出すための働きなのです。
風邪にしても、インフルエンザにしても、その症状はつらいものです。
が、これは体が免疫機能を発揮して、ウイルスと闘っている証拠なのです。
むやみに自己判断で市販の解熱剤や咳止めを飲まないようにしましょう。
〇 インフルエンザになったらまずは病院へ
『昨日だるかったと思ったら、今日はいきなり高熱が出た。』
こんな症状の時に、自己判断で市販薬を飲んではいけません。
まずは病院へ行ってください。
インフルエンザにかかっているかどうか、どのインフルエンザの型(A・B・C型など)なのかを知るには、病院で検査してもらう必要があります。
鼻に長い綿棒を入れて検体を採取し、すぐに検査することが可能です。
インフルエンザと診断されたら、医師の指示に従って薬を飲んでください。
あとは、安静にしてぐっすりと睡眠をとることが何よりの治療になります。
● 会社にいつから出勤していいか
ゆっくり休んで睡眠をたっぷりとったらいいのはわかっているけれど、
なかなかそうも言っていられない…そんな人は多いはずです。
特にインフルエンザが流行しやすい時期は
『11月~12月に始まり、1月~3月くらいまで』
となっています。年末年始が忙しい社会人にとっては、一刻の猶予もならん!と言いたい時だってあるでしょう。
ここでは、『インフルエンザにかかった時、いつから会社に行っていいのか』を『インフルエンザの経過』と一緒に考えていきたいと思います。
〇 潜伏期間中
これはたいていの人が仕事に出ていますよね。だって、潜伏期間は目に見えませんもの。
『おいらはインフルエンザA型ウイルスだぜ!お前の体に侵入して潜伏中だぜ!』
と言ってくれるウイルスもいませんし(…当たり前です)
ただ、体がひどくだるく感じたり、頭痛があったり、咳やくしゃみが出たりという症状があらわれることもあります。
そういう時に早退できる状況でしたら、さっさと帰らせてもらいたいもの。
…といいますのも、潜伏期間中の時点からインフルエンザの伝染は始まっているからです。
潜伏期間から感染することもあるので注意が必要なんですよね。
でも実際は、忙しさにかまけて早退なんて出来ずじまい…に終わりがちです。
〇 発症から1日~3日目
いきなり高熱が出て、体の節々も痛い。ゾクゾクするしとてもじゃないが、仕事には行けない。
こんな時に、無理をして出勤しないでください。
というよりは、絶対に出勤してはいけません。
たまにいらっしゃるんですよね。
忙しいから休んでいられない…とか言いつつ、マスクしながら冷えピタ貼って仕事しようとする人が。
これははっきり言って、周りの迷惑でしかありません。
この時点では、インフルエンザが最も強力な感染力を持っています。
そこで無理をして出勤するということは、感染力の強いインフルエンザウイルスをまき散らしに出かけるようなものですからね。
忙しい時なら尚更迷惑ってもんです。
くれぐれも根性の押し売りはやめましょう。
また、こんな時に無理をしたところで、完治するまでに時間がかかるだけです。
仕事の効率ももちろん上がりません。
インフルエンザにかかった時は体の声に従って、しっかりと休みを取ってください。
学校でインフルエンザが流行すると、学級閉鎖されたりしますよね。
会社閉鎖というのはまずありませんが、それだけにかかった人の責任は大きいのです。
〇 解熱してから2日ごろ
一般的には、熱が下がってから2日くらいは休んだ方がいいと言われます。
これは、解熱後もウイルスが体に残留していて、くしゃみをしたりすることで排菌しているからです。
ですが、熱が下がったらさっさと職場に復帰している人が多いのではないでしょうか。
その際はマスクをして、周りの人が感染しないように注意を払ってください。
マスクはガーゼマスクだと効果がありません。
医療用のサージカルマスクが望ましいですが、一番重要なのは
『すきまが無いようにぴったりと顔にフィットしているものを使用する』
ことです。どこでも購入できる不織布マスクでも、しっかりと顔にフィットしたものを使うようにしましょう。
マスクは使い捨てとし、インフルエンザが完治するまでは着用するようにしましょう。
〇 会社の決まりがある場合は遵守する
会社によっては、インフルエンザに対応してマニュアルを作成しているところもあります。
本人はもちろんのこと、同居する家族がインフルエンザにかかっても休まなければいけない、
そのような職場もあるようですね。
また、完全に治ってから出社するために、診断書の提出が必要な会社があるとも聞きます。
そういう際は、会社の方針に従ってマニュアルを遵守しましょう。
職場がインフルエンザウイルスで汚染されないためにも、これは必要なことです。
いずれの場合にしても、まずは人に伝染させない。これが最も重要だと考えられます。
● まとめ インフルエンザは予防から
インフルエンザにかかってしまうと、休養を余儀なくされます。
仕事に支障が出てしまうのが困る!という方は特に、予防が大事ですよね。
〇 予防接種
薄めたり、弱めたりしたインフルエンザウイルス(ワクチン)を注射して、
インフルエンザに対する免疫(抗体をつくる)をつけることにより、
・ インフルエンザに罹患しにくくなる
・ インフルエンザに罹患しても重症化しにくくなる
という効果があるとされているのが、予防接種というものですよね。
予防接種をしたからと言って、完全にインフルエンザにかからなくなる…というわけではありません。
その証拠に『毎年インフルエンザにかかっている人』の口から『予防接種したのに~!』という言葉を聞くことがあります。
毎年少しづつ変異している(大流行のきっかけになる)A型ウイルスには対抗できないと言う人もいます。
ただし、重症化しないということは大事ですから、インフルエンザにかかりやすい人は予防接種した方が良いと思います。
〇 インフルエンザにかかりやすい人
・ 不規則な生活をしている(睡眠不足、食生活の乱れ、栄養不足)
・ 疲労、ストレスがたまりがち(免疫力が低下しています)
・ 低体温(平熱が35度台前半などの低体温は、免疫力が低下します)
・ 口呼吸をしている(鼻呼吸だと、鼻毛などのフィルターを通すので感染しにくいです)
・ 乳幼児、老人など、免疫力が弱い人
・ 肥満傾向にある人(肥満の人は口呼吸が多いからだと考えられます)
・ 混雑する電車や人ごみに行くことが多い(通勤電車などは避けられないですが)
〇 インフルエンザ予防に有効な習慣
・ 飛沫感染を防ぐために、インフルエンザにかかっている人にはマスクを着用してもらい、自分もマスクをしておく。
自分がするマスクは口や鼻の湿度を保ってくれるので感染予防になる
・ 接触感染を防ぐために、手洗いを徹底してやる。インフルエンザウイルスはアルコールに弱いので、手洗い後にアルコール消毒すると良い
・ インフルエンザウイルスは低温乾燥を好むので、室温湿度に注意する。加湿器の使用は有効
・ 低体温の人は特に、腹巻・タイツなどを着用して『体や内臓を冷やさない』ようにする
『インフルエンザにかかりやすい』という自覚のある方は特に、上記の内容に心当たりがないか確認してみましょう。
以上、インフルエンザにかかった時の『社会復帰』について考えてきました。
インフルエンザは予防が一番ですが、もしかかってしまったときには、
こちらの記事を参考にしていただければと思います。
コメントを残す